高宇洋が示したゲーム体力の意味 / 2018/08/10 vsFC東京

お疲れ様です。

必死のパッチの勝利でした。ショッキングな敗戦から中4日。戦術的な修正よりも、選手たちのメンタルへのアプローチが重要な準備期間だったようにも思っていた。

宮本監督は新米監督らしく、全力でその両方にアプローチをしてくれた。

戦術的な面と韓国サッカーの事情

ファンウィジョが韓国代表に召集されるため、8/10のFC東京戦から最長で9/1の川崎戦まで離脱する。前線での相手最終ラインとの駆け引き、守備でのチェイシング、シュートで組織のないクルピ体制下ガンバの中で奮闘していた選手。もちろん、彼ができるプレーは宮本恒靖監督にとってもキーファクターの一つである。はっきり言ってダメージである。

短期的に見て、離脱の影響は大きい。しかし、長期的に見ると今回のアジア大会でファンウィジョが優勝して帰ってくることはガンバにとってうまみがないわけではない。

韓国代表でこれから出場する大会に出て優勝することは『兵役免除』という韓国人サッカー選手にとってとても大切な権利を得る。兵役のことを考えるとファンウィジョがガンバに残れる期間は長くてあと1年半だっただろう。しかし、兵役免除を得られればオジェソク(ロンドン五輪銅メダリスト)と同様に、長期的なスパンでファンウィジョの扱いを考えることができるようになるのだ。

なお、ワールドカップメンバーでトットナムでレギュラークラスのソンフンミンも兵役免除のラストチャンスにかけてアジア大会にでる。トットナムもソンフンミンを開幕直後のこの時期に手放すなんて『無理』だけど、ここで兵役免除失敗すると、本当にタダ同然で手放さないといけなくなるので、飲むしかない。

こういう時に、朝鮮半島の事情はなんだかんだでまだまだ休戦状態なだけなのだと突きつけられる。

ストライカーの離脱とサイドバックの頭数不足への対応

さて、話をガンバに戻す。エースストライカーのファンウィジョの代わりをどうするか問題とサイドバックの重要なプレーヤーである初瀬をアジア大会のため失い、更には藤春廣輝が怪我?による離脱のため、サイドバックが不足してしまった問題に直面したガンバ。この2つの問題にも対応をしなくてはならない。そこの解決策を宮本恒靖監督は示してくれた。

ファンウィジョの代わりをどうするか問題は、昨年からU23宮本恒靖監督、山口智コーチが手塩に掛けて育成してきた一美和成を抜擢。一美和成は前線からのプレス、ボールを収めるという点でこの1年半で急速に成長した選手。トップでの紅白戦でも良いパフォーマンスを見せていたようで、自信を持って宮本恒靖は先発起用したのだと思う。実際、FC東京の代表クラスの2CB相手にも臆せずチャレンジしてくれたし、U23で見せていた収める、預ける、ゴール前に顔を出す、守備の時は追いかけるをしっかりとこなしてくれていた。

サイドバックがいない問題は、菅沼駿哉をCBに配置、三浦弦太を清水時代に経験があることを利用してSBに配置した。三浦に攻め上がりは期待してなかったようだけど、SBとしてのタスクはしっかりとこなしてくれてた。しかし、フラフラとするディエゴオリベイラの対応には最初から最後まで苦労してしまった。シンプルにゴール前にいるわけでもなく、中盤に下りて空いたところに飛び出してくる富樫敬真大森晃太郎なんかの対応には苦慮していた。ボールの出所から抑えていきたいのだけれど、前線からのプレスが必要。そんなトレーニングする時間が無いし、暑さもあるので9月以降に解決の道を探ることになりそう。

 

ゲーム体力の意味を示した高宇洋

 

前節の試合後のコメントで『ゲーム体力』というキーワードが出てきた。たぶんこの試合でゲーム体力の意味を示してくれたのは高宇洋だった。確かに走行距離でもこの試合で1番だったんだけど、常にポジション取りが適切だったと思う。ふたつシーンをピックアップ。

 

1つ目は56分頃、FC東京のビルドアップ失敗のシーン。

比較的余裕を持ってボールを回してそうに見えたFC東京だが、サイドバックの選手に、ボールが渡ったあと、サイドバックの選手は縦にボールを入れるしか無くなっていた。

その要因となったのは高宇洋のポジション取りだったように見える。高宇洋が誰をマークしてるのか一見良く分からないのだけど、あの位置どりは高宇洋の位置どりでパスコースを2つくらい潰していたのだ。斜めのパスを入れたくても、高宇洋が気になってバスを出せないFC東京のSB。残された選択肢は空いたスペースへの放り込みだけだったのかもしれないというシーンを演出した立派なプレーだった。

今野泰幸井手口陽介のように猪突猛進にアプローチしてボールを奪い切るのはカッコいいし派手なプレーだけど、この日の高宇洋のように、位置どりで相手の選択肢を絞らせるプレーはバクチ的な守備では無い安定感をチームにもたらすので、もっと成長しながら継続してほしい。

もうひとつは、アデミウソンのゴールに繋げたアシスト。95分、一番しんどい時間帯。高江麗央と米倉恒貴がボールを前に運べるとわかった時に、全力疾走で駆け上がらなかったのがすごく効いたと思う。全力で行けば、米倉恒貴、高江麗央はアデミウソン小野瀬康介、高宇洋に向かってのクロスしか選択肢が無くなってたと思うけど、遅すぎず早すぎずのペースであのポジションに走り込んだからこその、高江麗央からの横パスを引き出せたし、アデミウソンへの斜めのスルーパスを出すコースも作り出すことができたと思う。

攻守において、高宇洋が適切な位置どりを続けたことが走行距離(移動距離)の数値にも、ゴールと勝利に繋がったのはとても貴重なことだ。こういうことができる選手を安定して輩出して行くことは極めて重要である。そのためには若い時からの仕込みが大切な気がするので、ユースやU23で継続的に育成できる環境はガンバにとっての財産だ。

ショッキングな敗戦の後で勝ち取った劇的な勝利がチームに与える影響はあるだろう。宮本恒靖監督就任後の4試合。短期間の準備期間で1勝2分1敗で5ポイントをなんとか積み上げたこと、それでいてチームのベースを積み上げつつあることはそれなりに好材料だと思う。とはいえ、残留争いの本番はここからである。高江麗央、高宇洋、一美和成への対策も練られてくるのだ。

G大阪、21節終了時点で勝ち点20。残り13試合で20ポイント獲得し、勝ち点40に行くためには

4勝8分1敗

5勝5分3敗

6勝2分5敗

7勝0分8敗

ざっとこんなペース。最低6勝しないといけない!そんなイメージでここからチーム作りと選手の足りないところの成長を促していって欲しいところ。

宮本恒靖監督に課せられたのはタフなミッションであるが、短期的に結果を残して行けば将来に繋がる気がするので全力で応援して参る所存であります。

G大阪vsFC東京の試合結果・データ(明治安田生命J1リーグ:2018年8月10日):Jリーグ.jp

ガンバ大阪 2018マッチレポート | 8月10日 vs FC東京 | データによってサッカーはもっと輝く | Football LAB

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